「乙嫁語り」という漫画が好きです。まだ完結していない作品ですが未読の方にはオススメしたい!
「乙嫁語り」は昔のシルクロード周辺が舞台で、20歳のアミルが12歳のカルルクに嫁ぐところから始まります。まず当時の生活文化がとても興味深くて面白い!そして現代日本とは全く違うのにその中で行われる人間の営みや心の動きには普遍性があってキュンとしたりハラハラしたり笑ってしまったりします。アミルとカルルク中心に物語は進むのですが、他の「乙嫁」たちに焦点が移ってこの二人とは全く違った物語も展開しつつ進んでいきます。カルルクとアミルのように定住民×遊牧民もあれば、イギリス人研究者×遊牧民もあれば、地元同士の結婚もあり…いずれも違った形ですが最高の夫婦、お嫁さんたちです。
生きること、働くことのいとおしさ
個人的には森薫先生の漫画を読むと家事が楽しくなります。「乙嫁語り」でも食事を用意したり着替えを作ったり嫁入り道具を支度したり、生きるための営みが現代と全然違います。それが淡々と、かつイキイキと描かれるのが印象的で、家事やら近所との付き合いやらが何の説明もないのに自然に理解できるんですよ。何この文化知らない!と思うのですが、それを見ていると家事をしたくなるんです…。
- 週1回?のパンを焼く日になると村中の主婦が窯に集まってパンをこねこね、おしゃべりしながら楽しく働く
- 自分の嫁入りの時にあらゆる布製品を手作りし刺繍を施して持って行くため、似たような年齢の女の子たちが集まって面倒がりながらも素敵な品々を完成させていく
女性への目線が優しいからこんなに丁寧に描写されているのかな?と思うけど、家具屋のおじちゃんの仕事なども大変すばらしい描きぶりなので、そもそも人間への慈しみにあふれているんですね。
「エマ」もそうです。昔のイギリスのメイド=エマが上流階級の男性と結ばれるまでを描いた話ではありますが、エマのメイドとしての働きぶりを見ていると胸のすく思いです。
- 突然の来客がわかり、主人の老婦人と協力して素晴らしいおもてなしを用意する(そして来客はとりやめになり二人で食事するあったか展開)
- 使ったことのない様々な道具を駆使してお屋敷をお掃除(そして雇用試験合格)
などが好きです。エマの方が家事やりたくなる度は高いかも。家事をするメイドの話だから。
アミルも狩りから裁縫まで完璧にできる素敵な女性ですが、いずれも不思議と妬ましくはならないです。笑
画集のような美しさ
絵がひとこまひとこま描く喜びにあふれていて素晴らしいのです。画集のよう。人物は気合が入っているけど背景やらはそんなでもない…という漫画とは違います。小道具や調度品や動物や布の刺繍など、見れば見るほどめちゃくちゃ描きこんである…!
主役(視点)がどんどん移り変わっていくので、そのキャラクターに会わせて画風も調整しているらしく。脱帽!
イスラム的な結婚観
初々しいところのあるイスラム的な結婚観がとてもよいです。
以前読んだイスラムの本↓でも色々と新鮮でした。この本はまだ感想書いていないんですが、イスラムでの結婚や男女関係の考え方など…読んでいくうちにこっちが健全なのかも?と思ったりもします。イスラム的な女性の在り方は批判的に報道されることの方が多いけど、その中で暮らしている人にはそれなりの言い分があるものですね。
書籍だとマジで?と驚くことも、漫画で登場人物の心情と同時に見ていくと「あー、わかる」とすんなり思います。父親が絶対だとか。女性も男性も結婚がものすごく大切で、若くして結婚するんだけど「あの人と結婚?」となってからドキドキして好きになっていく感じとか。
髪はふだん隠していて夫や家族にしか見せないっていう文化も、説明なしでも納得しちゃいました。オッパイ的な存在なのかしら。
キャラクターの魅力
どのキャラクターも丁寧に作られているため魅力的すぎて、誰が主役になっても納得感があります。顔立ちや体型までも出身地域や育ちから違和感なく、練られているなあと感じます。
個人的にはウマルくんがとても好きです。照れ屋で失敗ばかりのパリヤさんの許嫁ですが、二人が距離を詰める段階でパリヤさんがしくじってもウマルくんが誠実に歩み寄ってくれるから結局うまくいくところが果てしなくキュンです!
表紙のこの人がパリヤさん↓
深みのある世界観
そういうキュンキュンも見どころですが、よりメリットのある相手に嫁ぎ直させようと実家の兄たちがアミルを取り返しにくる描写などから「争い」についても思いを馳せます。
そういうところで国と国との大きい戦争じゃない、家同士のいさかいや村同士の戦いもあるのだという当然のことに気づきます。気候のために食べ物がなくなることもある、食べ物がなければ死ぬ、どこかからとってこなくちゃならない。家族が飢餓や天災で死ぬよりも他人を殺してその土地を奪うことは考えるよね…そういえば大陸の人は性格がキツイ!攻め込まれる危険が島国より高いから!と地理の先生が言っていました。
昔って、もっと人を殺すことが日常的だったのかもしれません(もちろん日本でも)。そのぶん殺されることも仕方ないって考えたり、一方で報復を恐れて一生逃げ回る人もいたり。村の男たちは有事の時に武装して、「生きるために殺す」ってそういうことなんですね。
戦争はなくなってほしいけど、たぶん無理だろうなとも思ってしまいました。人間が食べものやエネルギーを欲する限り絶対に。「人を殺すくらいなら自分たちが死ぬ」って人がどれだけいるのかわからないけど、あまりいないからこういう戦争だらけの歴史なんでしょうね。国っていう概念がなかった時からずっと続いてきた争いの歴史なんだろうな…と、何を見ても戦争について考えてしまう今日この頃です。関連記事→「進撃の巨人」で考えた戦争と平和について
人間愛にあふれた目線で人々の暮らしの営みや夫婦間の愛が描かれる一方で、こういう争いについても目をそらさずに描かれていて、その分物語が深みのあるものになっていると思います。つまり一言で言うとオススメなので読んでほしい(*´▽`*)
まずは試し読みだけでも…!




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