山種美術館で開催中の展覧会へ行ってきた。5月14日まで。
世界に誇る日本のシンボル、富士山。2013年にユネスコの世界遺産に登録され、2023年で10周年を迎えます。山種美術館ではこれを記念し、富士山を描いた日本画と浮世絵とともに、同じく日本の象徴である桜を題材とした日本画をあわせ、周年を祝う特別展を開催します。
富士山は古くから、さまざまな芸術の源泉となってきました。(中略)さらに、桜を描いた作品では、当館のコレクションを代表する奥村土牛《醍醐》をはじめ、近代・現代の日本画家が手がけた桜の名画が並びます。富士山の世界遺産登録10周年という記念の年に、日本の美が凝縮された優品の数々をご堪能ください。
【特別展】世界遺産登録10周年記念 富士と桜 ―北斎の富士から土牛の桜まで― – 山種美術館 (yamatane-museum.jp)
美術館の外にも桜!
まず美術館に入る前にも見どころが!奥村土牛「醍醐」に描かれた桜を組織培養したという桜が入口横に植えられているのだ。これがチラシに掲載されていた「醍醐」↓

実物の桜はこれ↓


しかし既に見ごろは終わっていたようで葉桜だった…幹と枝のバランスか、あまり元気のない桜という印象を受ける。
「富士山」の作品
以下、はじめに付す番号は展示内の作品番号。作品写真はチラシもしくはポストカードより。
葛飾北斎(かつしか・ほくさい)の絵は「すごく好き!」と思ったことはなかったが、今回展示されていた5「富嶽百景」二編の「登龍の不二」は好きだった。仰ぎ見上げるような表情の龍のファニーフェイスとすっきりした富士と、もくもくした雲。

これは墨摺絵本の現物展示だったが、色々なページが見られる「富嶽百景」のパネル紹介が大変興味深く面白かった。
14松尾敏男(まつお・としお)「湧雲富士」もだが富士山と龍って似合うなあ…金泥がこんなに似合うモチーフもない。
20伊東深水(いとう・しんすい)「富士」はタイトル通り富士山が主役になっている屏風だが、単純化して表現されている富士よりも、画面手前の力強い松の方が印象的だった。垂れ下がっているのに力強い!
今回の展示で一番心を奪われたのは31川﨑春彦(かわさき・はるひこ)「霽るる」(はるる)だった。ポストカード販売がなく、チラシにも載っていなくて紹介できないのが残念。富士山を正面にとらえた大迫力の画面。強い風で雲が晴れた一瞬をとらえていて、本当に見事!その瞬きをとらえる心意気よ!群青の色合い!風を感じる雲のうねり!「威風堂々」という言葉を色で表現すると私の中では「赤」だが、青い威風堂々ってこういうことだと思う。美しい。
雲に隠れていても必ずそこにある富士の存在感。ちょっと砕けた言い方をすると「ラスボスのいる山」って感じもした(*´▽`*)
山種美術館の展示方法は毎度わかりやすく見やすくて素晴らしいが、タイトルの上に「10年ぶりの展示」であるとか「和菓子になりました」などの情報もきちんと表示されている。「10年ぶり」なんて書かれるとありがたみ倍増である。
「桜」の作品
37渡辺省亭(わたなべ・せいてい)「月に千鳥・桜に雀・紅葉に小鳥のうち『桜に雀』」を見て「雀ってかわいいなあ…」と、しみじみ。丸っこいシルエットに、くりくりの目、ちょっと漫画的に見えるくらい愛らしい。ここでの桜はマーガレットのような可愛らしさもあった。
39西郷狐月(さいごう・こげつ)「月・桜・柳のうち『桜』」掛け軸の細長い枠に枝垂れ桜という構図のバランスが好き!
40奥村土牛(おくむら・とぎゅう)「醍醐」については以前の記事でも書いているが、「極美を感じた」というエピソードが印象的。「極美」という言葉の鮮烈さよ!
他にはないうっとり感があると思う。すごく写実的というわけではないが、「意識の中の桜」ってこれくらいふんわりやわらかくうっとりしているかも。前回も感じたが、幹のなんともいえない色合いも素敵だ。
41小茂田青樹(おもだ・せいじゅ)「春庭」はこちら↓

はじめて聞いた人(詳しくないので)だが、とても好きな絵だった。幻想的で、西洋画のような色使いのように感じる。とけていくような幽玄の雰囲気。画面右の桜もよいが、左下の薔薇?椿?も、ふんわりとしているのに鮮やかで惹きつけられる。
43橋本雅邦(はしもと・がほう)「児島高徳」はワイルド系俳優のようなイケメン。後醍醐天皇を救えなかった無念の表情がきりりとしている。人物が主役で桜は脇役なのにまったく素晴らしい!前面の花弁だけでなくシルエットしか描かれていない後方がまた美しい。
45から47の美人画三連発は並びも最高!各種美人を堪能できる。
45菱田春草(ひしだ・しゅんそう)「桜下美人図」46上村松園(うえむら・しょうえん)「桜可里」47松岡映丘(まつおか・えいきゅう)「春光春衣」


↑右の絵の松岡映丘って民俗学の柳田國男の弟らしい!へえー!
50東山魁夷(ひがしやま・かいい)「春静」は、川端康成が「京都は今描いといていただかないとなくなります、京都のあるうちに描いておいて下さい」と頼んだというエピソードが添えられていた。本当、悲しくもおっしゃる通りです…今はもはやその頃のような京都ではないだろうから「こんなふうだった」ということを伝える上でも大切な作品になっていると思う。
そして山種美術館の素晴らしいところ!照明を落とした第二会場に夜桜を集めるセンスよ!
53稗田一穂(ひえだ・かずほ)「惜春」夜桜が風に散る様子なんだが、なぜだろう…高校生の髪がなびくような青春時代のイメージも感じた。


54石田武(いしだ・たけし)「春宵」↑左側。文字通り春の宵の色。細かく細かく描きこんだ花弁の向こうの薄紅色とも灰色とも藍色ともいえない、えも言われぬ色合い。
56千住博(せんじゅ・ひろし)「夜桜」↑右側も花弁が見えないくらい細かく描き込んである!桜色が他の作品よりも濃くて新鮮だった。色合いが現代的といおうか、他のものとは違った。
黒い薔薇の裸婦等の作品を見てから加山又造が好きで、55加山又造(かやま・またぞう)「夜桜」だけを目当てに来た展覧会だったが、他の作品がよくてびっくり!やはり絵画は実物を見ないとわからない。
カフェ椿のコラボ和菓子
おなじみカフェ椿のコラボ和菓子は「夜桜」をチョイス。チーズケーキもおいしそうだったが、向田邦子さんが菊屋の羊羹をベタ褒めしていたような気がしたので、菊屋謹製の和菓子ということなら羊羹を味わいたく。

器がさくら色!「夜桜」は甘み濃いめで堅めの食感。もしかして抹茶って味より香りを楽しむものなのだろうか…!と今回はじめて感じた(遅い)。抹茶は塩を感じる苦味で、苦くても少量なので甘味とのバランスがちょうどよい。
懐紙に竹串で提供するスタイルが美しい!お皿で出されるよりも奥ゆかしい印象を受けるのはなぜなの…(*´▽`*)実物の桜は散ってしまったが、花見気分を味わえる一服だ。





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