
東京都庭園美術館|TOKYO METROPOLITAN TEIEN ART MUSEUM (teien-art-museum.ne.jp)にて開催中。庭園美術館は皇族(朝香宮家)がもと住まわれたお屋敷で、アールデコ様式の美しい洋館だ。企画展開催中にも建物の解説などはそのままなので同時進行で鑑賞できる(目が嬉しく忙しい!)。建築は詳しくないが、個人的には建物細部のデザインが凝っていて可愛らしく、クラシカルなもの好きな乙女心をくすぐる。ただし企画展開催中は作品保護のためにカーテンを閉めきったり立ち入り禁止エリアが設けられたりするので、何も催していない時の方が建物自体はじっくり見られると思う。

サブタイトルを読まずに(!)コルセットと玉虫の甲冑のメインビジュアルに惹かれて出かけたので、ファッションに関するアイテム以外にシュルレアリスムが大々的に取り上げられていると思わず。最初からダリの作品が出てきて驚いたが、有名な人の作品が早速見られてラッキーと感じるミーハー心であった。エヘヘ。
ダリの立体作品は初めて見たが、「回顧的女性胸像」の目がリアルすぎてこわかった(そこかよ)…胸像の首のまわりに紙を一周巻いてあったのだが、セロテープでとめたところは見えていいの…?それも狙いなのかもと深読みしちゃうけどさ。雑誌VOGUEの表紙は写真のイメージしかなかったがシュルレアリスムの画家が描いていた時代もあったそうで、よくわからん感じが大変おしゃれに思った。
虫や動物をアクセサリーに…
しょっぱなから度肝を抜かれたのがメインビジュアルにもなっていた玉虫の甲冑。そのほか本物の虫を使ったアクセサリーたち。最初は「虫のデザインかあ」と思って見たが、デザインではない!素材が虫!「奇想」「装うことへの狂気」というタイトルが早速ここでしっくりくる。

いや、きれいだよ?きれいなんだけど…じっと見ると確かに面影が虫なの。これを身に着けると思うと鳥肌がたってしまう…そんな私はおしゃれ人間にはなれないのであろう…
鳥の羽根を使った帽子はよく見るけど、まるのままの剥製を載せた帽子とか!クチバシとか目がもうなんというか、死骸感が出ているの!もと生き物なの!だめーやめてー見ないでー!と思っちゃった。スコットランドのライチョウの足(モミジの部分といおうか)をそのまま使ったブローチなんかもあり、何とも思わない文化がすごいなと…他から見たら自分にもそういうところあるんだろうけどさ。
身体変形や髪の特別視
コルセットの隣に纏足(てんそく)靴が展示されていた。纏足は昔の中国で「女の足は小さければ小さいほどいい」として女の子が生まれると足を折り曲げ縛り上げて大きくならないようにしたという奇習。纏足の靴は初めて見たが、その小ささといったら!ほぼ足首のまま足がなくなっている感じ。衝撃。ヒールがあるんだな…歩かない(歩けない)のにそこはあるんだ…夫以外は父親にも見せないという歪んだ小さい足を見ると、男性は性的に興奮したそうな。纏足でないとできない性的なワザがあるとどこかで読んだ気がする。丁寧な刺繍が施された繊細な手編みの靴からは愛も感じるが、一方で美しいとされるものへの執着が恐ろしい。コルセットの「細いウエストは美しい」という感じ方には私も同意してしまうところがあるので、自分の中の感性もまた恐ろしい。
美しさのために身体変形を求められるのは圧倒的に女性の側であるように思うけれど、これは「女性は男性の所有物」という意識からなのだろうか?そうしたジェンダーの観点からの解説はなかったが、色々考えさせられた展示だった。
これらと紹介されていた文脈は違うが、遺髪のアクセサリーも大いに見ごたえがあった。ヨーロッパではペンダントやブローチに遺影とともに遺髪をきれいに編んで入れ、身に着けていたという。自分が亡くなった側ならそんなふうに大切に身に着けて思い出してもらえたら嬉しいと思う。肉体が朽ちても髪は腐ったりしないため特別視された、という解説に納得。
紙の資料も面白い
紙の資料も見どころが多かった。昔のヨーロッパのものなのか、紙製の着せ替え人形が紹介されていたがドレスのデザインが大変素敵だった。裏(後ろのデザイン)もしっかり描きこまれて、とても精巧。200年近く昔のものだが、現代のものと比較して仕組みがほぼそのままである。今は小さい女の子向けのおもちゃというイメージだが、昔は大人の女性がドレスオーダーの参考に使っていたらしい。手彩色とあったが、売る側が塗ったのか買ってから使う人が塗ったのかが気になる。
極端に大きい帽子やモリモリの髪型もシラフでやっていたのがすごいな…三角とんがり帽子をかぶった女性のイラストがかわいい!と思ったがこれが普段着だったのか。隔世の感。ヴェールつきでもうちょい大きかったけど、ほんとこんな感じ↓ファンタジック!
紙の資料は文化学園図書館 (bunka.ac.jp)からの貸与が多いようだ。開いてある以外のページも見たくて調べてみたら、文化学園所属のほかは大学生、大学の教職員、文化学園の受講生でないと図書館の利用はできないようだ。しかし「貴重書デジタルアーカイブ」なるものがあり、気になる文献は原題(フランス語ならフランス語)で蔵書検索してみてデジタルアーカイブに保存済みであれば他のページも見ることができる。そもそも閉架(禁帯出)なので、デジタルでも中身が見られるのはありがたい。脱線するが現物展示の資料はKCI|公益財団法人 京都服飾文化研究財団のものが多いように感じた。いずれもファッション系の展示には欠かせない存在のようだ。
髪を結っている様子を描いたイラストを見て「髪結は西洋でも乳まるだしスタイルで行われたんだな…」と思っている横で「髪にこんなに時間かけるのすごくない?髪型なんて1日だけでしょ?」と話している人がいた。昔のヨーロッパで髪を洗う頻度なんて数か月に一回とかじゃなかったっけ?生涯洗わなかったんだっけ?そういうポイントも解説に載せないと正しく伝わらないものだなと感じた瞬間であった。
「ショッキングピンク」
「ショッキングピンク」という色を名付けたエルザ・スキャパレッリという人を初めて知ったが、そのショッキングピンクのドレスを今の感覚で見ると「ピンクというより赤みが強い」色に感じたのが意外だった。もっと青みのあるピンクを想像していたが、染色の発達で一層ショッキングな色を追い求めて現在の色になったのかもしれない。
ここの展示ではトルソーモチーフの香水瓶が素敵すぎた…!
着物の展示も!
和のモノはまったく期待していなかったので、ひっそりと着物と帯留(おびどめ)の展示があったのは意外だった。帯留の宝飾的な価値についてはよくわからないが、本をかたどったものの繊細さに圧倒された。彫金で細かい細かい文字が書いてあるのだが、どんな技術なの…鳥肌!
着物の展示があったためではなかろうが、着物を着てきていた人は2、3人見た。いずれも若めの女性で、羽織を合わせた正統派な着こなしもあり洋装ミックスもあり。洋服の来場者も、服飾系専門学生や美大生と思われるおしゃれな人が目についた。
新館の作品は撮影自由
いわゆる「映える」感じの最近の作品は新館にまとまっており、ほぼ全て撮影自由という大盤振る舞い。履物がほとんどという印象だった。

これは下駄?ぽっくり?がモチーフのようだが、「ヒールレスシューズ」など洋の靴を中心に、とにかく作品数に圧倒された。ほぼ作家蔵だったが、実際履けるのだろうか。めちゃめちゃ高い靴だけど(物理的に)。
「センスがよい」という言葉でまとめていいものか謎だが、これらの靴の造形は美しく、好きな感性だった。

スプツニ子!さんの関わる作品をちゃんと見たのは初めて。蚕の遺伝子組み換えによって発光する生糸から作ったというドレスの展示だが、これも好きだった。このポージングと、禁欲的なデザインのドレスということからジェンダー的な主張も含んでいるように感じる。糸で吊っているのがまた…!展示室をまるごと1室広々使う贅沢な演出だが、ふさわしいと感じた。
鑑賞上の注意(新型コロナウイルス関連)
全般的に作品横の解説が小さすぎ、解説待ちで密になりがちだった。会場自体は広々としているし作品もギッチリ並んでいるわけではないのだが、解説の文字があまりに小さくて、近くに寄らないと読めないためそうなってしまうのだ…。この建物の雰囲気を壊さずに見やすい解説文をおしゃれに取り付けるのが難しいのはよく理解できるので、仕方ないのかもしれない。気になる人は順路を無視して人のいないところからまわる努力をした方がいいだろう。
また「庭園美術館」という名ながら庭園を閉鎖中である。建物内はよくて屋外がダメというのは不思議だが、そういう決まりになっているので従うしかない。庭園目当ての方はご注意を。
レストラン、カフェ
庭園美術館は、展示終盤にカフェが出現する。新館の奥である。疲れた頃に到達するのでフラフラと入りそうになるが、個人的にはこのカフェよりも併設のレストランの方がオススメだ。
カフェは外から様子がわかって入りやすそうに見えるためいつも混雑気味(60分制らしい)。店員の姉さん方も忙しいのかツンとしてなかなか案内してくれない様子。なのでケーキはおいしそうだったが諦めた。笑
しかし!空腹を感じながら帰路に就こうとした時、目に入ったレストラン「DuParc」にも同じケーキがあったのだ(全種じゃないが)!一度門の外に出てから入るようになっているレストランのため、カフェと違って美術館を鑑賞しなくても利用できる。外からは中の様子があまり見えず入りづらいが、ひとたび入れば親切なイケメン店員たちがサッと案内してくれるので心配しなくていい。


喧騒から離れてひっそりとしている一方、壁の二面がガラス張りで庭園をのぞめる。カフェと比較しても椅子がゆったりしているのが嬉しい。外の看板には「ランチは3000円のコースのみ」とか書いてあり躊躇してしまうが14時からはカフェタイムでケーキは700円くらいから。今回いただいたショコラオランジュは850円だがホットチャイとセットで税込み1510円。白金台かつこの眺望を思えばバリューな値段設定ではなかろうか。味は期待通りのおいしさだった。
こちらのレストランは時間は制限していないようだった。ベビーカーの人たちも複数見かけたので、ファミリーもそこまで気負わず利用できそうだ。ワインも飲めるようでこのロケーションには特別感もあるので、ちょっとした記念日ランチにも。
まずは公式サイトをチェック!
前売りチケットが必要だったり庭園が閉鎖されていたり…普段とは勝手が違うので、何はなくとも公式サイトをチェックしてから出かけることをオススメする。
東京都庭園美術館|TOKYO METROPOLITAN TEIEN ART MUSEUM (teien-art-museum.ne.jp)



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